最大の原因はプロテーゼによるカプセル拘縮
プロテーゼ法での豊胸術で最も多いトラブルが「バストが硬くなってしまった」というもの。これは挿入したプロテーゼによる「カプセル拘縮」が原因です。
プロテーゼをバストに挿入すると、やがてプロテーゼの回りに薄い皮膜が作られていきます。皮膜は時間をかけて少しずつ形成されていき、やがてプロテーゼをぴっちりと覆ってしまいます。スーパーの食品売り場に行くと、ハンバーグやハムなどがぴっちりと真空パックされて並んでいますね。まさにあのようなイメージで、プロテーゼをしっかりと包み込むようなカプセルができあがってしまうのです。
こうすることで私たちの体は異物を排除し、その影響を極力少なくしようとするわけですが、その結果プロテーゼが本来持っている流動性は失われ、硬い感触になってしまいます。
カプセル拘縮を防ぐことはできないのか
こうした働きは生体の防御作用であるため、止めることはできません。つまりどんなに優れた医師がていねいに手術を行っても、皮膜が作られるのを防ぐことはできないのです。そのためプロテーゼ法では術後のバストを定期的にマッサージして、カプセル拘縮が起こらないようにしています。
皮膜はプロテーゼにぴったりと密着するように作られますが、その形成スピードはゆっくりです。ですからある程度皮膜ができたところでバストをマッサージし、その皮膜を破ります。しばらくすると破れた部分を補うように再び皮膜が作られていきますので、またマッサージを行います。こうするとプロテーゼそのものは皮膜で覆われてしまいますが、その大きさがプロテーゼよりも大きくなるため、バストは柔らかいままに保つことができます。
それでもバストが硬くなるのはなぜ?
ですがこうしたケアを行っても、バストが硬くなってしまうケースは少なくありません。
その理由のひとつには、術後のマッサージがハードで痛みを伴うため、ついつい加減をしてしまう、ということが挙げられます。もともとバストはデリケートなものですし、プロテーゼ法では術後の痛みも強く残りがちです。術後の経過は個人差が大きいものですから、マッサージをしなくては…と思っても「痛くてそれどころではない」というケースもあるでしょう。
また痛みをこらえてマッサージを続けたとしても、その効果を確認することができません。皮膜の状態を見ることができないのですから、皮膜が破られたかどうか、確認するすべがないのです。そのため「マッサージを続けたのに、カプセル拘縮が起こった」という結果につながってしまうのです。
プロテーゼの中にはカプセル拘縮が起こりにくいものもありますが、完全に防げるわけではありません。体質によって発生率も異なりますし、手術時の出血や炎症などによってリスクはさらに高まります。
バストが硬くなってしまったらどうするか?
カプセル拘縮が起こり、バストが硬くなってしまうと、感触が明らかに変わります。バストの中にテニスボールを入れたような感じになり、触れたときにはっきりとした異物感を感じます。こうなってしまったら外科的処置で皮膜を破るか、プロテーゼを取り出すかしなくてはなりません。いずれにしても再度の手術が必要、ということになります。
私は常々、プロテーゼ法の問題点を指摘してきましたが、この「バストが硬くなる」というのは深刻な問題だといえるでしょう。
また、近年ではヒアルロン酸注入による豊胸術も行われていますが、この方法でもバストが硬くなるケースがあります。これは医師の技術にも関わるところなのですが、筋肉のような硬さを帯びてしまうこともありますし、一ヶ所に大量の注入を行ったためにカプセル拘縮と同じ結果になってしまったという例もあるようです。
このようなトラブルがかなりの高率で起こりうるということを見ても、これらの治療法は決しておすすめできるものではないと私は考えています。
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