脂肪注入法でのしこり…カプセル拘縮は、先にお話ししたように「注入した脂肪に充分な栄養が行き渡らなかったため」というのが原因です。そしてそうした状況を引き起こす原因は、実は手術の方法によるところが大きいのです。主なものを挙げてみましょう。
①注入した脂肪粒が大きすぎた場合
②大量の脂肪を無理に注入した場合
③脂肪を1か所にまとめて注入した場合
④注入した脂肪に不純物が多かった場合
これらのケースでは、バストに注入する脂肪が細胞レベルではなく、ある程度以上の大きさを持っています。いわば「脂肪塊」というレベルのものですから、表面近くはともかく、塊の中心部近くまで栄養を届けることができません。そのために細胞が生きていけず、また免疫システムによる処理もできないという事態におちいり、その結果としてカプセル拘縮が発生するというわけです。
ここ数年で広まってきたヒアルロン酸による豊胸術。この方法にはさまざまな問題があるのですが、「術後にしこりができた」というトラブルが後を絶ちません。
ヒアルロン酸そのものは安全な素材なのですが、現在豊胸に使われているヒアルロン酸は分子量が大きいため、なかなか体内に吸収されていきません。少量ずつ、バスト全体にまんべんなく注入した場合には、ゆっくりと吸収されていくのですが、一ヶ所に大量に注入されてしまうと、人体の免疫システムによって「異物」と認識されてしまいます。するとプロテーゼと同様の「カプセル拘縮」を起こし、しこりとなって残るばかりか、バストを変形させてしまうことも少なくありません。
カプセル拘縮が起こると、その周辺には小さな炎症が多数発生します。それが周辺の組織を刺激して、継続的な痛みや発熱を引き起こす原因にもなるのです。

現在は、注入したヒアルロン酸を分解する薬剤が作られ、実際に使用しているクリニックもあります。ですがこの薬剤も決して万能ではありません。何度も注射しないと効果がないケースもありますし、ヒアルロン酸の種類によっては、まったく効果を表さないということもあります。
ヒアルロン酸による豊胸は「手術ではない」ということもあって、気軽にとらえられているように感じます。「注射するだけで、今すぐバストアップ」「万一のときは溶解剤を注射すればOK」と、軽く考える女性が多いように思うのです。
ですがその後の経過やトラブルが起きたときの対応などを考えてみると、これも体に無理を強いる方法だといえます。決して安易に考えず、十分に検討してから手術に臨むようにお願いします。