トラブルの発生初期であれば、強いマッサージで皮膜を破り、元の状態に修正を試みるということもできるかもしれません。ですがバストの形がいびつになるほどに拘縮が進んでいると、そうした方法での修整が難しいケースがほとんどで、最終的には再手術によって修整を図るしか方法がありません。
カプセル拘縮は術後の炎症が強いと起こりやすく、手術時の出血の多寡によってもそのリスクが変化します。ですから手術の際、片側だけ出血が多かったようなケースでは注意が必要です。
カプセル拘縮以外にも原因はある
カプセル拘縮以外にも、バストがいびつになってしまう原因はあります。ひとつは加齢による変化であり、もうひとつは出産・授乳後の変化です。
バストはそれ自身の重さを、胸の筋肉や膜によってつり下げられて支えています。ですから中年以降の年齢になるとこれらの筋肉が衰え、やがて少しずつ下垂していきます。同時にバストの皮膚の弾力も衰えてバストはしぼみ、形を変えていきます。
また妊娠・出産を経験すると、授乳に備えて胸の乳腺は一時的に大きく発達します。ですが無事出産を終え、授乳期が過ぎると、乳腺はしぼんでいきます。そうなれば当然のようにバストも小さくしぼんでいきますが、元の形に戻ることはありません。
こうした変化は生理的なものですから止めることはできず、またバストがしぼんだとしてもプロテーゼそのものに変化はありません。結果として形がいびつになってしまったり、左右がまったく違う形になってしまったりするのです。
長い目で見て充分な検討を
このように、プロテーゼ法では術後の経過において、長期的なデメリットが少なからずあります。ですが手術を受ける女性たちが、そうしたデメリットやリスクをどこまで理解しているのか、医師として心配になることがしばしばあります。
美容整形が一般にも普及してきたのはこの10年ほどのことであり、その中でも比較的「敷居の高い」手術である豊胸術…プロテーゼ法豊胸術をリクエストする女性が急増したのは、ここ数年のことです。ですがプロテーゼ法そのものはそれ以前からある手術法ですし、実際に多くの女性がこの手術を受けてきました。そうした女性たちのうち出産や老化を経験した方々の中には、こうしたトラブルに悩まされている方が決して少なくありません。豊胸術を希望される患者様はまだまだ増加傾向にありますし、またプロテーゼ法は多くのクリニックで行われています。今後、妊娠・出産を経験し、さらに体が衰える頃になったとき、こうしたトラブルに苦しむケースはさらに急激にくるものと容易に予想されます。。
これから先、長い人生を生きていくあなたの大切な体です。一時の満足だけにとらわれず、長い目で考えていただきたいと思います。
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