こうしたトラブルはまず、執刀医の技術レベルによって発生率が変わります。プロテーゼを挿入するとき、本来の理想的な位置に収めることができず、側面や下側寄りに挿入してしまうと、やがてこうした状態になりやすくなります。ですがそれ以上に問題なのは、プロテーゼの種類や大きさの選択ミスです。
プロテーゼ法のバストアップ効果にも限界はある
プロテーゼ法は脂肪注入法と違って、バストサイズを劇的にアップさせることができます。日本人女性のバストの悩みはほとんどが「大きさ」に関することであり、そのため格段のバストアップが可能なプロテーゼ法は現在の豊胸術のまさに「主流」といえるほどに普及しています。実際にほとんどの美容整形クリニックで扱われていますし、多くの女性たちがプロテーゼ法を第一選択としてきました。
ですがあまりに極端なバストアップを狙って大きすぎるプロテーゼを使用すると、トラブルのリスクはどんどん高まっていきます。カプセル拘縮や石灰化、プロテーゼの位置ズレによる変形や左右のバストのアンバランスなど、多くのトラブルを招く危険が非常に高まってしまうのです。ここでお話ししている「バストの段差」も同様です。もともとのバストと比較して、挿入するプロテーゼが大きすぎると、数年ののちにプロテーゼの位置がずれてしまい、こうした段差が表れることが多いのです。
あなたのニーズに合った方法を見つけよう
今でこそ豊胸術の主流となっているプロテーゼですが、開発された当初は「人工乳腺」と呼ばれ、「乳房再建」のためのインプラントという性格が強いものでした。乳ガンの手術などで乳房を切除したあと、その再建のために用いられる用途を想定したものだったのです。
そこから美容的な豊胸を目的としたプロテーゼ法が注目を浴び、広く一般に普及していった、という経緯があります。そのような歴史的な流れの中で、プロテーゼは少しずつ進化し、その安全性も高められてきました。
ですがどれほど安全性が高められたとしても、プロテーゼはやはり体にとって「異物」でしかありません。しかもそれなりの容量を持った、大きな異物です。体にとっては決して好ましいものではありませんし、できることなら排除したいものであるはずです。「カプセル拘縮」という生理反応は、それを如実に物語るものだともいえるでしょう。
このような異物を、ただ「ボリュームアップしたいから」というだけの理由で健康なバストに埋め込むのはいかがなものでしょう? 確かに悩みやコンプレックスを解消することはできるかもしれませんが、長期的な視点で見れば、それ以上の悩みの種を背負い込むことになるのではないでしょうか?
「それでも、今すぐ大きなバストがほしい」という女性が数多くおられることは事実ですし、それを否定もしません。またそうした要求がある以上、プロテーゼ法そのものを攻撃するつもりはありませんし、それを行う医師を批判するつもりも毛頭ありません。メリットとデメリットを医師がきちんと説明し、患者様はそれを理解し、そのうえで治療が行われるのであれば、他人が口を挟むことではないはずです。
ただ(これは豊胸術に限ったことではないのですが)、あなたが望んでいる結果を得る手段は、一つではありません。他にもいろいろな方法があるのです。それぞれのメリットとデメリットを長期的な視点も含めて理解し、じっくり検討したうえで、あなたのニーズに最も合った方法を見つけていただきたいと思います。
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