現在の豊胸術ではさまざまなプロテーゼが使われており、その内容物や表面形状、細部の形などはさまざまです。ですが一般的な形状としては直径が10センチほどの円盤状で、周辺部は薄く、中央付近が少し盛り上がっています。例えるなら「どら焼き」のような形です。ですがカプセル拘縮が起こるとプロテーゼの周囲は膜で覆われ、やがて少しずつ締めつけられていきます。それとともにプロテーゼ自体が変形していき、球に近い形になっていきます。どら焼き形だったものが、テニスボールのような球形へと形を変えてしまうのです。
こうした変化によって、バストの見た目も変わってしまいます。「すそ野」部分はなくなり、バストそのものが球状に変形してしまって、結果として谷間が広がってしまう、というわけです。
谷間の広がりを防ぐことはできるのか
こうしたトラブルを防ぐには、カプセル拘縮そのものを防ぐことが肝要です。しかしカプセル拘縮そのものは正常な生理反応ですし、それを止めることはできません。定期的なマッサージなどの術後のケアで、ある程度防ぐことはできますが、それとて完全ではありません。カプセル拘縮の発生率として「10人に1人」、つまり10%程度という目安がありますが、それも「だいたいこれくらい」という数字にすぎませんから、実数がどれくらいなのか、想像もつきません。
このように、カプセル拘縮はさまざまな弊害をもたらします。もともとのバストに対して、挿入するプロテーゼの大きさが大きくなればなるほど、カプセル拘縮のリスクは高まりますし、トラブルが起こったときの症状も強く、大きくなります。ひどいケースですと「平らな胸にテニスボールを埋め込んだ」ような状態にまで変形してしまうことすらあります。こうなると「バストの大きさ」「バストの美しさ」以前の問題でしょう。
美しい理想のバストを手に入れるためには
基本的にプロテーゼ法はバストのサイズアップを図るものであって、「形を整える」というニーズには向いているとはいえません。バストの土台となる部分をかさ上げすることでボリュームアップするものですので、細かな整形まではできないのです。ですからもともとのバストの大きさや形、左右のバランス、乳頭の位置、さらには大きさや形も含めて、どのようなプロテーゼを使うのかによって、望む仕上がりが得られないケースも出てきます。さらに手術から数年ののちにカプセル拘縮が起こってしまうと、より大きな変形やアンバランスが発生することになります。
逆に脂肪注入法の場合、極端に大きなサイズアップはできませんが、脂肪の注入量や注入する部位を選ぶことで、サイズだけでなく形も整えていくことが可能です。谷間を作りたいのでしたら左右のバストの内側を中心にボリュームを持たせれば良いですし、デコルテに広く注入すれば優雅なバストラインを作り出すこともできます。
バストの悩みは深刻になりがちで、その内容も人ぞれぞれでさまざまです。ですが目先のメリットばかりに目を奪われてしまうと、のちに後悔することにもなりかねません。長いスパンでのメリットとデメリットをよく見きわめ、自分にとって何が必要なのかをしっかり検討することが大切です。
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