豊胸術で起こる「石灰化」とは
プロテーゼ法でも脂肪注入法でも、この石灰化現象は起こる可能性はあります。ですがその説明の前に「石灰化」というのがどんなものか、それを知っておくことは必要でしょう。
石灰化というのは、体内の組織にカルシウムが沈着し、文字通り石灰のような状態に変質してしまう現象です。病的なものではありますが、石灰化そのものはさして珍しい現象ではありませんし、それが起こったからといって健康被害に直結するものでもありません。
石灰化の例としてよく挙げられるのは、中年男性に多い「尿管結石」でしょう。これはもともと、腎臓の組織の一部にカルシウムが溜まり、それによって石灰化した組織がちぎれて、尿とともに尿管に運ばれて周辺の組織を刺激する症状です。この結石も元を正せば腎臓の一部なのですが、カルシウムが沈着することで柔軟性を失い、石のように硬く変質してしまうことから「結石」と呼ばれます。
体内の組織にカルシウムが沈着する原因はさまざまです。ですが豊胸術に限っていえば、プロテーゼの周囲に小さな炎症が起こり、そこが石灰化する場合と、注入した脂肪の周囲で石灰化が起こり、しこりとなって表れる場合があります。
石灰化が起こるとどうなるか
まずプロテーゼ法の場合ですと、手術から10年以上の長い時間が経っていると、石灰化が起こっている可能性は大いにあります。
胸に挿入されたプロテーゼは体にとって異物です。そのためプロテーゼ周辺の組織では、必ずと言って良いほど炎症が起こります。たとえ自覚症状はなくても、比較的程度が軽く、規模も小さい炎症が、プロテーゼ周辺のいたるところで、延々と続いていくのです。すると炎症の起こっている部位に体液に含まれるカルシウムが集まって沈着し、石灰化が起こります。炎症はプロテーゼの周囲全体で起こっていますから、やがてプロテーゼを覆い尽くすように石灰化が進んでいきます。
こうなるとバストの感触はもちろん、形まで不自然になってしまいます。除去しようと再手術を行っても、広範囲に石灰化した組織をすべて除去することはまず不可能です。
挿入してからの期間が長ければ長いほど、石灰化の可能性は高まります。また石灰化が起こってしまうと、それによってプロテーゼそのものの劣化や破損の危険性も高まります。石灰化そのものはカプセル拘縮と同様、体が持っている正常な機能のひとつですから、これを完全に避けることはできません。
ですからプロテーゼ法での豊胸を行った場合には、定期的な検査とともにプロテーゼの入れ替え手術の可能性が高いということを認識していただきたいと思います。
脂肪注入法でも石灰化は起こりうるが…
石灰化は、脂肪注入法でも起こります。それは、一ヶ所に大量の脂肪を注入した場合です。こうしたケースでは注入した脂肪の周囲が石灰化し、それがしこりとなって表れることも考えられます。ですが現実には、これは「執刀医の技術的な問題」であって、脂肪注入法に特有のものではありません。高い技術と十分な経験を備えた医師が手術を行えば、事前に回避することができるものです。
実際に、現在行われている脂肪注入法では、こうしたトラブルを避けるために一度の手術で注入する脂肪量に制限を設けています。あまりに大量の脂肪を注入してしまうと、石灰化を招く危険が高まってしまうからです。こうした制限のために「脂肪注入ではバストをあまり大きくできない」という定説が生まれ、それが一般にも信じられてきました。
だからといって、脂肪注入法が「豊胸効果が低い」ということにはなりません。ある程度の期間を空けて複数回の治療を行えば、プロテーゼ法に匹敵する豊胸効果を得ることも可能なのです。この方法なら石灰化を避けつつ安全な豊胸を行うことができます。近年登場した「コンデンスリッチ豊胸」ならば注入した脂肪の生着率が高く、理想に近いバストを長くキープでき、しかも石灰化の危険を低く抑えることができます。多くのリスクや不安要素をはらんだプロテーゼ法とは、比較するまでもないと思うのですが、いかがでしょうか。
|