将来的な不安がつきまとうプロテーゼ法
プロテーゼ法に特有のものとして、将来にわたる精神的な不安が常につきまとう、ということが挙げられます。これは具体的なトラブルとはいえませんが、さまざまなリスクを背負うことに対する心理的な負荷は、決して小さなものではありません。
そうした不安の元にあるのは「プロテーゼは体にとって異物である」という明らかな事実と、そうしたプロテーゼそのものに対する安全上の不安です。
過去、さまざまなプロテーゼが登場してきました。それらは常に「安全性」をうたい、「理想の豊胸術」を可能にするといわれてきました。ですが実際に使用してみると、予測以上に早く劣化してしまったり、強度が不足して破損してしまったりと、予想外のトラブルに見舞われることが少なくありませんでした。ここ10年ほどに限ってみても、広く使用されていたプロテーゼに安全上の疑問が見つかり、「抜去・入れ替え」を推奨されるといった出来事が起こっています。厳しい言い方(「正確な」といったほうが良いかもしれませんが)をしてしまえば、プロテーゼの安全性とは「今のところ、安全だと考えられている」というレベルに過ぎないのです。
症例によって差が表れる「トラブルの発生率」
もちろん、現在のプロテーゼは過去のものに比べ、非常に高い安全性が確保されています。実際に使用されるまでには気の遠くなるような試験や実験を繰り返し、最新の知識と技術で開発・製造されています。ですがその安全性は決して100%ではありません。
さらに、術後にどのようなトラブルが起こるか、またどの程度の確率で発生するのかは、個々の症例によって大きな差があります。これは患者様ご自身の体質に加え、選択したプロテーゼの種類や手術のやり方、術後のアフターケア、その後の生活習慣など、非常に多くの要素が関連します。ですから「どのようなトラブルが起こりうるか」ということは判っていても、それがどのような形で、いつ頃に起こるのかは、誰にも判りません。あなたは、いつやってくるか判らないトラブルの不安とともに日々を生きていくことになります。
再手術という大きな負担
またプロテーゼ法の場合、何かしらのトラブルが起こると、そのまま放置しておくことができません。カプセル拘縮、プロテーゼの破損、位置のズレやリップリングなど、そのままにしておいても治るものではありませんから、あらためて再手術を施し、プロテーゼを入れ替えるなどの対策をとる必要があります。
さらにこうしたトラブルがなくても、再手術の可能性は高いのです。プロテーゼにはそれぞれ耐用年数…寿命があり、半永久的にバストに入れておけるものではないからです。プロテーゼはバストに挿入している期間が長いほど、石灰化やカプセル拘縮の可能性が高まります。そうなると破損する危険も高まりますので、抜去や交換が必要です。つまりは、いずれは再手術の可能性が高いのです。これは患者様にとって肉体的にも精神的にも大きな負担でしょう。もちろんそれなりの費用も必要です。
このように、プロテーゼによる豊胸では劇的なサイズアップが実現するかわり、さまざまなリスクを負うことになります。ですが豊胸手術を受けるか受けないか、受けるとすればどの方法で、どのクリニックで手術を受けるのか、最終的に決断できるのはあなた自身です。そのためにも手術を受ける前にこうした事柄を十分にご理解いただき、よく検討して、その上で結論を出すようにしてください。
くれぐれも、術後数年も経ってから後悔することのないように、じっくりお考えいただきたいと思います。
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