脂肪の壊死とはどういうことか?
壊死というのは体内の細胞が何らかの原因で破壊され、文字通り死んでしまうことです。全身のほとんどの細胞で起こり得ますし、その原因はさまざまです。何らかの病気によって細胞壊死が起こることもあれば、強い衝撃や外傷によって、その周辺の細胞が壊れ、壊死してしまうケースもあります。
バストに限っていえば、事故のような強い外力によってバストの脂肪が壊れる脂肪壊死が起こることがありますし、また豊胸術では注入した脂肪が体内で壊死してしまうこともあります。過去の脂肪注入法では、この細胞壊死はある程度、避けることのできないものでもありました。
ですが豊胸術で発生する脂肪壊死は、重大な結果を招くことはあまりありません。ただ、時として壊死した脂肪組織の周辺で慢性的な炎症が起こることがあります。こうなると痛みとともにしこりが見つかることがあり、乳ガンと間違われることがあります。その際にはきちんと検査することが必要ですが、これが脂肪壊死によるものであれば、特に治療の必要はありません。壊れた脂肪細胞はやがて体内に吸収されていきますし、しこりができた場合でも数ヶ月のうちに消えて無くなってしまいます。定期的な経過観察をきちんと行っていれば、まず問題はないでしょう。
なお、「脂肪壊死がガン化することはないのか」と心配される方がおられますが、細胞壊死と乳ガンとの関連性はありませんので、この点についてもご心配は不要です。
脂肪の壊死に伴うデメリットとは
脂肪壊死が起こったときに問題になるのは、壊れた脂肪が体内に吸収されることで、バストが小さくなってしまうということでしょう。もともと注入した脂肪はそのすべてがバストにとどまっているわけではありません。注入したうちのいくらかは、体内に吸収されてしまいます。そのうえ脂肪壊死が起こり、壊れた脂肪まで流れ去ってしまったら、生着率はさらに落ちる一方です。
これは、過去の脂肪注入法が抱えていた大きな課題でした。自然な仕上がりや肉体的な負荷の軽さというメリットを持ちながら、脂肪注入法が今ひとつ普及してこなかった理由の一つでもあります。ですがそれは「どうしようもない問題」ではありません。手術のやり方次第で、改善することができるものです。
そのための方法のひとつとして、注入する脂肪を「選別する」という手法が挙げられます。脂肪細胞にもイキの良いものと悪いものがあり、元気な脂肪細胞のみを注入することで壊死を防ぎ、生着率を高めることができます。注入する部位と注入量にも気を配り、無理のない範囲で美しいバストに仕上がるようていねいに注入します。その他さまざまな手法があるのですが、これらの工夫を重ねたことで、私のクリニックでは一般水準以上の生着率を維持することができました。
さらにそこに登場したのが「コンデンスリッチ豊胸」なのです。
衰えた細胞を除去することで壊死の危険を回避する
コンデンスリッチ豊胸は「CRF」とも略称されますが、近年注目を集める新たな手法です。注入した脂肪に特殊な処理を施すことで、生着率を飛躍的に高めたことが最大の特徴です。ですがCRFは、脂肪壊死の回避にも大きく貢献しているのです。
脂肪注入法で脂肪壊死を起こす大きな原因とされるのは、脂肪とともに注入される死活細胞…つまり老化して衰えた細胞、あるいは寿命が尽きて死んでしまった細胞です。そのためCRFでは、特殊なフィルターと遠心分離器による処理によって、こうした死活細胞を取り除き、その悪影響を極力抑えることに成功しています。そのために、従来の常識を打ち破る高い生着率を得ることができるようになったのです。
脂肪の生着率と並んで、注入した脂肪の壊死は、バストの「その後」を大きく左右する要素です。そうした不安から多くのデメリットに目をつぶり、プロテーゼ法を選んでしまう方も多いことでしょう。ですが現在の脂肪注入法は、過去とは比較にならないほどの進化を遂げています。どうか安心してご相談いただきたいと思います。
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