リフトアップと豊胸手術との違い
あまり一般的ではないのですが、美容整形では従来の豊胸手術とは別に、バストの「リフトアップ」を目的とした整形も行われています。通常のバストアップや豊胸と同列に語られることもあり、女性の間でも混同する方が少なくないようですので、ちょっとお話ししておくことにしましょう。
バストのリフトアップとは、バストを「引き上げる」ことを目的とした治療です。一般の豊胸手術は、プロテーゼや脂肪細胞などをバストに挿入または注入することでバストのサイズを大きくする、つまり「バストの体積を増やして大きくする」ということが目的です。ですがリフトアップは下垂したバストを引き上げる、または下垂を目立たなくするということが目的ですので、必ずしも体積を増やす必要はありません。この点で豊胸手術とは大きく異なります。
豊かなバストは女性にとっても憧れですが、サイズによってはバストが自身の重さに耐えきれず、下垂してしまうことが少なくありません。加齢とともに胸の筋膜がゆるんでくれば当然バストも垂れてしまいますし、もともとの形が「垂れ型」という方もあるでしょう。
そうした方々にとっては飛びつきたくなる治療なのですが、その方法はどのようなものなのでしょうか?
バストを引き上げるその方法とは?
美容外科で行うバストのリフトアップには、切開を伴うものと、そうでないものがあります。まずは切開法からご説明しましょう。
この方法では、バスト表面の皮膚を切開して一部を取り除き、縫合するという手法をとります。たとえば下垂のために下側がぽってりとしているケースでは、乳頭の下から縦に切開し、皮膚を適当に切り取って縫い縮めれば、バストラインもスマートになり、リフトアップ効果が得られる、というわけです。
また、乳輪の上側を皮膚の色の変わり目に沿って切開し、縫合するという方法もあります。これはバストを持ち上げるというよりも、乳頭の位置を上に動かすことで、バストの位置を上げて見せるというものです。
いずれにしても皮膚にメスを入れることになりますから傷跡は避けられませんし、結果として「美しいバスト」に仕上がるかどうかということも、また別の問題です。
糸でバストを引き上げるリフトアップ術
もうひとつの方法が糸を使ったリフトアップ術です。手術による整形なしでバストアップを図る方法で、クリニックによってはヒアルロン酸注入とともにプチ整形としてメニューに加えているところもあるようです。
糸を使った美容整形には顔のシワ取りやたるみ防止の若返り術がありますが、それをバストに応用したのがこの手法です。バストの下側の膨らみに沿って皮下に数本の糸を通し、糸の両端は鎖骨の下あたりに固定します。するとバストをつり下げるような格好で支えることができ、下垂を矯正できるというものです。
これはバストの内側にブラを埋め込むようなものですから、バストを持ち上げるとともに下垂の防止にも役立ちます。ですが糸を使用することによる異物感の可能性や仕上がりの美しさなどを考えると、とてもお勧めできる方法とはいえません。確かにプロテーゼ法や脂肪注入法と比べれば「より手軽に受けられる」ということは言えますが、術後の経過や効果の持続性についても疑問が残ります。手術時の負荷の軽さや所要時間の短さばかりを優先して、肝心の仕上がりや効果の持続性がおろそかになってしまっては、本末転倒でしょう。
美容整形の技術は日進月歩で、次から次へと新しい手法が登場してきます。そうしたものには私も常に目を配っていますが、新しいものが必ずしも優れたものだとは限りません。その点はご相談の前にしっかりと覚えておいていただきたいと思います。
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